ファンマーケティングを活性化するDX
現在、若年層を中心に『推し活』という言葉が注目されています。主には自分の好きなアーティストやキャラクターを「推し」として応援し、グッズの購入やライブへの参加などで「応援」するような動きを指しています。この「推し活」の特徴的な点は、一定の企業側の施策は影響するものの、基本的にはファンが自発的に消費行動を起こしている…という点です。この、「推し活」のように企業やサービスの熱心なファンに注目する施策が「ファンマーケティング」です。
このファンマーケティングは、デジタル技術による顧客体験の向上やビジネスの効率化・最適化を行うDXの流れと組み合わせることでさらに効果が期待されます。今回の記事では、このファンマーケティングとDXの関わりについて取り上げます。
鈴木脩一
研究員/広報
- 調査概要
ファンマーケティングとは
ファンマーケティングとは、商品やサービスをはじめ、企業自体のファンを生みだすことで継続的な売上の拡大を目指す手法を指します。特に企業側から顧客と密接にコミュニケーションを取ることが特徴です。
ファンマーケティング施策
ファンミーティング/ファンコミュニティ
ファンマーケティングの施策の一つに企業とファンが交流するファンミーティングがあります。ファンミーティングは、一言で言えばファンが商品やサービスを体験できたり、社員と交流して意見や要望も伝えたりする場です。企業によっては新商品やサービスのアイデアを出し合う座談会を開くケースもあります。また、同じ商品を使うファン同士のコミュニケーションが行える場を企業側が設ける「ファンコミュニティ」の施策も活発です。
いずれの施策もリアルな場での開催だけでなく、オンラインでの交流やSNSやライブ配信等も活用されています。
アンバサダー・プログラム
ファンの中でもSNS等で積極的に商品に関する情報を発信する顧客を「アンバサダー」として、その協力関係を築く手法です。自発的に情報発信を盛んに行っているファンに企業が直接打診して「公式アンバサダー」という形で公に活動する形式や、SNS等での発信に対して特典をつけることでアンバサダーとしての活動を呼びかける場合もあります。
DXで加速するファンマーケティング
このファンマーケティングが浸透してきた背景には、スマートフォンやSNS等のデジタル化により一消費者が発信力を持つようになってきたことが上げられます。そして、現在さらなる進化として登場しているメタバースやNFTといった新しい技術とコミュニケーションのあり方でファンマーケティングも変化しています。
ファンマーケティング✕メタバース
株式会社ブルボンでは『ブルボンメタバース』と名付けられたメタバース空間で企業やファン同士のコミュニケーションをとっています。ユーザーは空間内ではブルボンの商品の魅力や世界観をゲーム感覚で知ることができます。また、仮想空間内を巡ることで手に入れられるコインを一定数集めると新しいアバターを手に入れることもできため、空間内をくまなく移動する動機づけにも繋がっていることも特徴です。
さらに、仮想空間内にはブルボン本社ビルが再現されており、実際に本社がある新潟県柏崎市の360度パノラマの風景を体験したり、柏崎市にある実際の施設やお店を体験できたりする空間も用意されました。企業と顧客のコミュニケーションに加えて、地域との共生やそのブランディング向上を相互に行えることもメタバースならではの利点と言えます。
NFTを活用したファンマーケティング施策
サッポロビール株式会社が展開している「SORACHI 1984」は独自のマーケティング戦略を取っています。特に早い段階から「NFT」や「ブロックチェーン」を活用してきたことが特徴です。
具体的には独自の「SORACHIトークン」をプラットフォーム上で発行し、ユーザーはこのトークンを集めることで商品に関連するNFTを受け取れるという施策を2021年から行っていました。この「SORACHIトークン」は企業からのアンケートへの回答やファンミーティングへの参加、さらにはSNSで「SORACHI1984」について投稿したことをプラットフォーム上で申請することでも集められます。
このようにファンは、積極的に施策に参加することで特典をはじめメリットを受け取ることができ、企業はファンによる拡散効果やニーズの収集も期待できる施策です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回はファンマーケティングと、そのあり方がDXによって進化している点をご紹介しました。中期的に継続的な売上が見込めることはもちろんですが、SNS等を通したファンの発信がさらなるファンを呼び込むことも長期的なメリットと言えます。
今後も情報発信のあり方の進化とともに、ファンマーケティングの手法も進化していくことが期待されます。