新しい体験を生む「スポーツDX」
DX推進DX用語
2023年は世界的なスポーツイベントが多く開催された年でした。3月には日本の優勝で盛り上がりを見せた野球のワールド・ベースボール・クラシック、夏には沖縄を舞台に日本代表が自力でのパリオリンピック出場権を獲得したバスケットボール・ワールドカップが開催されました。そしてこの秋にはラクビーワールドカップが開催されるなど、様々な形でスポーツを楽しむことができた年と言えます。
このスポーツもDXによりさらにその価値を拡大・加速させる動きが現れています。それが「スポーツDX」と呼ばれる動きです。今回はこの「スポーツDX」について紹介していきます。
- 調査概要
スポーツDXが注目される理由
現在国内では文部科学省を中心に様々なスポーツDXに関する政策が進められている
スポーツ庁では令和4年の「第3期スポーツ基本計画」の中で「スポーツ界におけるDXの推進」について政策目標を以下のように記載しています
『スポーツ界においてDXを導入することで、様々なスポーツに関する知見や機会を国民・社会に広く提供することを可能とし、スポーツを「する」「みる」「ささえる」の実効性を高める。』*1
では具体的にどのようなメリットが期待されているのでしょうか?
*1 https://www.mext.go.jp/sports/content/000021327_20220317_2.pdf
スポーツの持つ価値を広く浸透させることができる
スポーツには体力の向上や健康促進といった身体な良い影響はもちろん、教育的な側面や人々の交流を深めるといった社会的なメリットも様々な自治体や企業から期待されています。
一方で指導者がいない、一緒にスポーツを体験する人がいない等の地理的・環境的な側面で、スポーツの体験が難しい…という人も少なくありませんでした。
その為、プレイヤーやコーチのマッチング・オンラインでの技術指導などデジタル化による実現が期待されています。
DXによる新たなビジネスモデルの創出
冒頭でご紹介した世界的なスポーツイベントや自分の応援するチームの試合はテレビの生放送だけではなく、ネットのライブ配信などでPCやスマホで楽しんだ人も多いのではないでしょうか。
このように様々な形の観戦体験をデジタルで広げることは新たなファン層の拡大や、新しいスポーツ観戦のビジネス創出にも繋がります。
さらには観戦した人や視聴者のデータを収集することにより、よりファンに最適化されたコンテンツを開発していくことも期待できます。
スポーツDXの事例
次に具体的なスポーツDXの事例をご紹介します。
バーチャルスポーツの取り組み『バーチャルツール・ド・フランス』
新しいスポーツのあり方として注目されているものが「バーチャルスポーツ」です。この「バーチャルスポーツ」はプレイヤーの体の動き、スピードやパワーをオンライン上の仮想空間に反映して競い合います。話題の「eスポーツ」とは、実際に体を動かして競うという点で異なります。
バーチャルスポーツは、コロナ禍で様々なスポーツ大会が中止や延期になり、物理的にアスリートが集まらない形での大会として注目が集まりました。
【アイテム使用可】バーチャル版「ツール・ド・フランス」が話題にhttps://t.co/HDKAbjFQnq
— 電ファミニコゲーマー (@denfaminicogame) July 14, 2020
『マリオカート』のようだと話題のバーチャルレースが7月4日より開催中。ゲーム感覚でサイクリングを楽しめる「ズイフト」を利用。一定のリアリティはありながらも、普段と少し異なるレースの楽しみ方がある pic.twitter.com/ttsy5Z5iYb
2020年に世界的な自転車レースである「ツール・ド・フランス」はその開催が延期となりましたが、運営元がバーチャルスポーツのシステムを活用した「バーチャルツール・ド・フランス」を開催しました。
「Zwift」と呼ばれるこのシステムではローラーの上で自転車を走らせることで、そのスピードが仮想空間内に反映され、ログインしている他の参加者とそのスピードを競えるようになっています
実際にツール・ド・フランスに出場予定だった選手がそのスキルを競うだけでなく、仮想空間ならではの要素として加速させるアイテムなどが使われることで「まるでゲームのマリオカートみたいだ」と新鮮な観戦体験となり話題となりました。
ARグラスを活用したスポーツ観戦の新しい形
新しい観戦の形としてARグラスを活用したスポーツ観戦も研究が進められています。
NECではプロバレーボールのVリーグと連携したARグラスを使った観戦の実証実験を行っています。ARグラスを使って試合会場を見ると、選手に関する情報がリアルタイムに見ている光景に重ねて観ることが可能です。
同じように情報が表示されるテレビやオンラインの配信とは異なり、実際の会場の雰囲気や迫力を味わいながら情報を知ることができるため、今後新しい形の体験として注目されます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はスポーツとDXに関してご紹介しました。来年の2024年には制限のない形で行うことが予想されるパリオリンピックが開催されます。更にスポーツへの関心が高まることで、DXによる新しい体験が期待できるでしょう。