インフラの新しい形 「交通DX」で変わる未来
DX推進DX用語生産性向上
先日の記事ではモビリティの進化とマーケティングに与える影響についてご紹介しました。自動運転が可能な自動車や小型電動バイクなど様々な進化が進んでいますが、地域や国を支える公共交通機関や高速道路などの交通インフラにおいてもDXが進んでいます。
今回はこの「交通DX」がマーケティングやビジネスに与える影響についてご紹介します。
- 調査概要
交通DXとは?
「交通DX(デジタル・トランスフォーメーション)」は、一般的にデジタルテクノロジーを駆使して交通・運輸を効率化する手法とされています。経済活動の効率化はもちろん、人口減少に伴う就労人口の減少から、事業の担い手も減っていくことへの課題解決として官民併せての取り組みが進められています。
交通DXにむけた国の取り組み
スマートシティの構築に重要な「交通DX」
国土交通省を中心に「交通DX」は、スマートシティ構築への一環として注目を集めています。デジタル化による効果的な交通制御やデータ連携により、市民生活を向上させることが目的です。
国土交通省が2022年に発表した『まちづくりのデジタル・トランスフォーメーション実現ビジョン』の中では今後の都市政策にはまちづくりのDXによってスマートシティの構築が叫ばれています。それを支えるために交通DXが必要となります。
交通DXが実現する「MaaS(Mobility as a Service)」
交通DXの代表的な事例が「MaaS(Mobility as a Service)」です。国土交通省のHPでは以下のように定義されています。
MaaS(マース:Mobility as a Service)とは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。
引用:国土交通省「日本版MaasSの推進」より
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/japanmaas/webaccessibility/index.html
私達が移動、特に長距離の移動を行う際には複数の交通機関・手段を活用することになります。その際には個別で経路の検索と決済が必要ですが、MaaSはこれらを一括で提供できるサービスの考え方です。フィンランドのヘルシンキで始まったこの取り組みは現在日本でも進められており、各省庁を横断して令和元年から実証実験が進められています。
交通DXに向けた民間の取り組み
モビリティサービスの拡充
民間企業も積極的に「交通DX」に着手し、先日ご紹介したような新たなモビリティサービスの拡充が進んでいます。個々人の移動手段だけでなく、自動運転を可能にする地域循環の
公共交通バス等を張り巡らせることで運転手などの乗務員が少ない地域でも市民の交通手段を確保する試みです。
データドリブン・マーケティング
交通DXによって得られるメリットは交通の効率化だけでなく、莫大なデータの蓄積です。何人乗車して…といった断片的なデータだけでなく、混雑傾向や移動先の傾向等の人流を事細かに収集することが可能になります。
この交通DXによって蓄積されたデータを活かす「データドリブン・マーケティング」が注目されています。ユーザーの移動パターンや嗜好を分析し、ターゲット広告やパーソナライズドサービスの提供が進むことにより、今後の交通広告のあり方が大きく変わってくることが考えられます。
これまではポスターや大型掲示で期間内に掲示していたものが、サイネージなどのモニターと組み合わせることで時間帯や乗客属性に併せたプロモーションを可能にします。
今後の展望
高速通信との連携
交通DXに欠かせないものが高速通信を可能にする通信インフラです。交通DXやモビリティシステムは常に移動しながら大量のデータのやりとりが必要です。2030年代の実用化に向けて検討が進められている6G(第6世代移動通信システム)は5Gの10倍の通信速度と同時接続能力があり、交通DXを支えるインフラとして注目されています。
AIの活用拡大
AI技術の進化により多くの自動運転モビリティの制御や「データドリブン・マーケティング」において大量データの分析にAIが活用されることが期待されます。
まとめ
今回は交通DXについてご紹介しました。自動運転やAIを活用したデータ収集はまだまだ実証実験が進められている段階です。安全性の問題やプライバシー保護の観点で課題は指摘されているものの、今後の様々な社会課題の解決に交通DXは大きな役割を果たすことが期待されます。