MR(複合現実)がビジネスの未来を変える
DX推進生産性向上
近年、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)と並んで注目を集めているのがMR(複合現実)です。MRは、現実世界と仮想世界を融合させる新たな体験を生み出す技術であり、エンターテイメントの世界に加えてビジネスの現場でもその力が注目されています。
今回の記事ではこのMRがビジネスの現場をどう変えていくのかをご紹介します。
鈴木脩一
研究員/広報
- 調査概要
MRとは?
MRは、現実世界と仮想世界をリアルタイムで重ね合わせ、視覚、聴覚、触覚などの感覚を通じて体験できる技術です。ARとVRの違いは、ARが現実世界に情報を追加するのに対し、MRは現実世界と仮想世界を融合させることです。
以前にもご紹介した「AppleVisionPro」やMicrosoftの「HoloLens2」などがデバイスとしても注目されています。
ビジネスの現場での活用事例
MRは、すでにさまざまなビジネスシーンで活用されています。
リモートワークにおけるコミュニケーションの促進
MRは、リモートワークにおけるコミュニケーションを促進するツールとして活用されています。例えば、Microsoft Mesh for Teamsは、MRヘッドセットを用いて、あたかも同じ空間にいるかのようにコミュニケーションを取ることができるプラットフォームです。
物理的に離れたメンバーが身近で対面で会っているようなミーティングを持つことも可能となるほか、社員の教育や支援、共同学習からバーチャルな会合の開催もできるようになります。参加者はこの共有型バーチャル体験の中で現状はアバターを介してやりとりをしていますが、今後技術の進化により現実の姿に近い立体映像で自分の姿を映し出すようになるとも言われています。
医療現場における手術支援
MRは、医療現場における手術支援にも活用されています。例えば、医師はMRヘッドセットを着用して、患者の体の内部を3Dで可視化しながら手術を行うことができます。
製造現場における作業効率の向上
MRは、製造現場における作業効率の向上にも活用されています。例えば、作業者はMRヘッドセットを着用して、作業手順や必要な情報をリアルタイムで確認しながら作業を行うことができます。
MRの課題点
MRは多くの可能性を秘めた技術ですが、現状では克服すべき課題もいくつか存在します。
コストの高さ
MRヘッドセットなどのデバイスは、スマートフォン等と比べて価格が高く導入のハードルもまだまだ高い状況です。先程紹介したAppleVisionProは約50万円、MicrosoftHoloLens2は約40万円と一般の家庭や中小企業が導入するにはコスト面が鍵となります。
技術的な複雑性
MR技術は複雑であり、コンテンツを開発する側は勿論ですが実際に導入する際や運用する際には企業側にも専門知識が求められる形になります。適切に管理やメンテナンス等を行える体制が必要なため機材だけでなく人的なリソースも必要です。
ユーザーインターフェース
MRデバイスのユーザーインターフェースは主に目の前の空間に現れるため、非常に立体的なものになります。この分野はまだまだ発展途上であり、使いにくいと感じられる場合もあります。今後はよりデザイン的な考えのもとに、使いやすさ・わかりやすさの研究が求められます。
酔い
VRコンテンツでも見られる減少ではありますが、MRヘッドセットを長時間着用すると、酔いを感じてしまうことがあります。個人差はあるものの、いわゆる3D酔いと呼ばれるような症状への対応も必要です。
今後のMR
さまざまな課題を含むものの今回ご紹介したMRは、今後ますます進化していく技術です。高速通信規格が整備されることでどこでもリッチなMRコンテンツの体験ができるようになることも期待されています。さらに、今話題の生成AIなどの技術と組み合わせることで、AIで作られたアバターが24時間MR空間上で社員の代わりに受付対応する…といったより高度な体験ができるようになるでしょう。