心の動きを数値化する?「感情分析」の未来
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これまで、マーケティングや広告の分野では成果を購買行動のような具体的な「行動」によって計測することが主となっていました。しかし、現在は行動を起こす際の人々の感情の変化、いわゆる「心」の動きを数値化して様々なビジネスの現場で活用する動きが現れています。今回は今後注目のキーワードになりうるこの「感情分析」についてご紹介します。
- 調査概要
「感情分析」とは?
感情分析とは大まかに言えば人間の感情や気持ちの変化を読み取り、分析する技術の総称です。主には人が入力するテキストや音声、表情、場合によっては脈拍や体温など様々なデータを基に、感情を数値化して分析します。大量のデータの学習とそこからの高度な計算が必要となるため、主には人工知能(AI)が活用されています。
「感情分析」技術の種類
テキストによる感情分析
私達が入力しているテキストをAIによる自然言語処理によって、文章から感情を分析する技術が生まれています。特にSNS等で特定のトピックや商品に対するユーザーの感情がどうなっているのか、どう変化しているのか…といった傾向や情報を集めるために期待されています。
音声による感情分析
音声、特に人々が実際に話す言葉のトーンや抑揚、声量の大きさなどから感情を認識し、分析する技術も生まれています。個人宅で利用されるスマートスピーカーや、顧客から大量の電話を受けるコールセンターで活用されています。
ロボットと組み合わせることで感情に応じた対応ができるコンテンツ等も今後増える可能性があります。
表情による感情分析
人々の顔の表情を映像から分析し、感情を判定する機能も今後拡大する可能性があります。感情の変化によって現れる目や鼻と言ったパーツの位置関係などの、大量のデータを元にカメラやビデオ通話でその変化を数値化するものです。先ほどもご紹介したロボットの事例では、音声と表情の感情分析を組み合わせて総合的に判断します。
「感情分析」がもたらすメリット
顧客満足度の向上
これまで数値化できなかった顧客の感情を把握することで、本来の意味での「顧客満足度」を上げるためのサービス改善に活かせます。新商品や新サービスが従来のものより感情をポジティブに変えることができているのかどうか?といった、売上などの数値では測れない部分を可視化することで、次の施策に活かすことができます。
市場トレンド・自社情報の収集
感情分析、特にSNSなどのテキストの解析を通じて市場のトレンドやユーザーの反応を把握できます。例えば自社がどのようなイメージを持たれているか?そして、ブランディング施策を打ち出したあとに感情の変化は現れているか、といった認知度だけでなくより本質的な「ブランディング」に迫ることが可能です。
従業員のストレス軽減
顧客だけでなく企業で働く従業員の感情を理解し、適切なサポートを提供できます。特に昨今では働き手不足が問題になる職場も多く、安心して働くことができる職場環境の構築は非常に重要です。社内アンケートなどでは中々現れない従業員のリアルな感情を元に、より満足度を高める職場づくりが可能になります。
「感情分析」のデメリット
導入コストがかかる
現時点では感情分析を可能にするAI技術の導入には多くのコストがかかってしまう現状があります。
汎用的な使用が難しい
人の感情とその変化は個人差が大きいため、「誰にでも当てはまる」汎用的なモデルを作成するのは非常に難しいとされています。そのため、その精度がより高めることが求められます。
個人データ保護に注意
個々人の感情の動きは、プライバシーの問題にも関わる情報でもありその保護やセキュリティ面での対策は非常に重要です。
まとめ
現在日本では、NTTや丸紅と言った大企業の関連会社でも感情分析のサービスが開発されています。今後はセキュリティやコスト面、コンプライアンスのデメリットを加味した上での活用が期待されます。