感情と記憶に訴求する 「香り」のマーケティング
DX推進営業活動
2024年4月にファーストフード大手チェーンのマクドナルドがオランダで行ったマーケティングキャンペーンが話題になっています。それは何も描かれていない看板から自社の人気商品である「フライドポテト」の香りがする…という非常にユニークなものでした。
これまでのマーケティングや広告は視覚や聴覚に訴えるものが一般的でした。今後、新たに嗅覚に訴える手法としてこの「香り」が注目されるかもしれません。
今回はこの「香り」がもたらすマーケティングの新たな可能性に注目したいと思います。
- 調査概要
嗅覚は人間の「感情」と「記憶」に直結している
香りを感じる「嗅覚」は人間が持つ感覚の中でも特に感情やその行動に大きな影響を与える感覚と言われています。その理由としては感情を司る「大脳辺緑系」と呼ばれる部署に、嗅覚が直接接続されていることが大きな要因です。この「大脳辺緑系」には記憶を司ることで有名な「海馬」が存在しており、記憶とも非常に繋がりが強くなります。
小さい頃に食べたものの匂いを改めて嗅ぐと、当時の記憶が思い出される…という経験は誰しもあるのではないでしょうか?
それがなぜマーケティングにおいても重要な要素となるのか、そしてその可能性について探ってみましょう。
感情・記憶と結びついたブランド体験
ブランドは顧客との感情的なつながりを築くことが重要です。香りはその一環として、ブランドの雰囲気やイメージを強化します。顧客が特定の香りを感じることで、そのブランドとのポジティブな経験を思い出すことができます。
先程のマクドナルドのポテトはその最たる例とも言えます。香りを嗅ぐだけで、ポテトを食べて美味しかった記憶やマクドナルドというチェーン店に対するポジティブな感情をより強い形で呼び起こすことが可能です。
店舗やホテルで特定のフレグランスを使用して、後日顧客へ送るDMなどにそのフレグランスを使用してDMを開くと同時に店舗に訪れた時のことを鮮明に思い出させる…といった試みも産まれています。
香りによる消費者行動の誘導
研究によれば、特定の香りは消費者の行動に影響を与えることが示されています。例えば、リラックスした香りは購買意欲を高める一方、爽やかな香りは集中力を高める助けとなります。マーケティング戦略において、このような知見を活用することが重要です。
高級ブランドを扱うショップや外車のディーラーなどではリラックスした香りでラグジュアリー感と購買意欲を高める一方で、遊戯施設等の長時間滞在してもらい施設を楽しんでもらう…という施設では爽やかな香りで対応するといった事例があります
香りを活用した施策の事例
様々な企業や施設でこの香りを活用した施策が広がっています。
東京スカイツリーの足元にある『すみだ水族館』は香りに注目した事例として広く知られています。多彩な展示物があるなかで、エリアや季節に応じた香りを配合・充満させることでより記憶に残る体験を提供しています。
おはようございます。すみだ水族館エントランスから、ホワイトデーの本日限定「バラの香り」をお届けします。(←伝わらない)(こん) #ホワイトデー #バラの香り #ペンギンと音楽の夜 pic.twitter.com/YYCKek8JOU
— すみだ水族館【公式】 (@Sumida_Aquarium) March 13, 2015
今後の展望
香りのマーケティングは技術の進化により、より精巧な香りの調合や放出が可能になり、新たな可能性が広がることが期待されます。ハードウェアの進歩は勿論ですが、今後はここにAIなどを活用した香りの「視覚化」「言語化」が進むことが期待されています。
企業は積極的に香りを取り入れることで、顧客との深い結びつきを築き、競争力を高めることができるでしょう。