マンガの新しい形 ウェブトゥーンとは何なのか?
DX用語
普段マンガをあまり読まないという方でも、近頃「ウェブトゥーン」(WebToon)という言葉を聞く機会が増えているのではないでしょうか。スマートフォンやデジタル技術による新しい形のマンガのあり方として現在世界的にも注目されています。今回はこのウェブトゥーンについてご紹介します。
鈴木脩一
研究員/広報
- 調査概要
ウェブトゥーンとは
ウェブトゥーンとは従来の紙の本のページをめくり横に読み進めるのではなく、スマートフォンで縦に画面をスクロールしながら読むタイプのマンガの総称です。2004年に韓国のインターネットサービス企業「NAVER」が、電子コミックサービスとして「NAVER WEBTOON」を始めたことがその始まりと言われています。
従来の横読み漫画が主流だった日本でも、2014年7月に「LINE WEBTOON」としてサービスが開始し、無料で読める作品も多く見られたことから徐々にウェブトゥーンが広がりました。
ウェブトゥーンを展開する企業・サービス
漫画を読む、という文化が幅広い年齢層に浸透している日本はその市場規模の大きさから様々な企業がウェブトゥーン事業に参画しています。
韓国系企業
まずウェブトゥーン発祥の国である韓国系の企業やサービスが日本市場にも積極的に進出しています。LINEでも展開しているNAVERWebToon(LINEマンガ)に加えて、テレビCMなどでもおなじみの「ピッコマ」(カカオグループ)が有名です
国内大手IT系企業
スマートフォンでの利用を前提としたウェブトゥーンには国内のIT系企業が多く参入しています。特にゲームも展開する「Cygames」や「DeNA」といった大手企業は自社ゲームコンテンツの漫画化や、有名作家の起用も積極的に行っています。
大手出版社
すでに多くの漫画作品を保有している既存の出版社もウェブトゥーンのいきおいは無視できるものではありません。集英社や講談社といった大手出版社でも、人気作品をウェブトゥーン化(縦読みに再編集する)して展開したり、ウェブトゥーンオリジナル作品を展開したりするなど積極的に取り組んでいます。
ウェブトゥーンの押さえておきたい特徴
デジタルを活用した制作手法であること(フルカラー、分業…)
ウェブトゥーンの特徴として多くの作品がフルカラーで制作されていることが挙げられます。従来の紙の雑誌を前提としていたマンガ作品では印刷のコストの兼ね合い等からモノクロや部分的なカラーにとどまることが一般的でした。しかし、スマートフォンでの購読を前提としたウェブトゥーンではインクや紙といった物理的な制限も無いためフルカラーでの表現が積極的に行われています。
一方でフルカラーでの制作はモノクロ作品と比較して色を付ける作業も必要になってきます。それを可能にしているのがもう一つの特徴である「分業制」です。
従来の日本の漫画作家の制作体制ではストーリーやキャラクターデザイン、マンガのベースとなる「ネーム」(コマ割りなどの構成・構図の下書き)は作家個人に委ねられているケースがほとんどです。
一方でウェブトゥーンでは分業制がより進んでおり「脚本」「作画」「着彩」「文字・効果」といった形でそれぞれの専門性を活かす形で作業が細分化されています。そのため、フルカラー且つ多くのページをスピーディに仕上げることが可能になっています。
カラーで状況が分かりやすく、アップテンポに展開する作品
ウェブトゥーンはその制作方法だけでなく、作品そのものにも特徴があると言われています。(もちろん、作品の世界観やストーリーによっても異なりますが)第一に縦読みという特徴も影響して、どんどんと物語がスピーディに進むアップテンポな展開の作品が多いことが特徴です。そのため、展開が早く、次が読みたくなるような仕掛けの作品が多く見られます。
また分業制を活かしたフルカラーでの表現を活かし、背景や人物の描写が分かりやすく描かれていることから、状況が分かりやすく・登場人物に感情移入しやすい作品が多く見られます。
今後の展望
ある調査*1によれば、全世界のウェブトゥーン市場規模は2023年の時点で約45億ドル、今後5年間で280億ドル規模まで成長する…とされています。全てのウェブサービスがモバイルファーストへ移行する世界的な傾向に加えて、特に現在ウェブトゥーンが発展している日中韓以外のアジア各国の経済成長性など様々な要因が後押しするという見方が一般的です。
日本初のアニメやマンガが世界的な人気を博している現在、今後はウェブトゥーン発信の日本の作品が世界で注目される日もそう遠くないのかもしれません。
*1:https://www.gii.co.jp/report/moi1408395-webtoons-market-share-analysis-industry-trends.html